仙台市青葉区に本社を構える、創業80年以上の歴史を持つ老舗のかまぼこ店。「笹かまぼこ」の名づけ親としても知られ、新・仙台名物の「ひょうたん揚げ」が全国的に有名になるなど時代とともに進化し続けている。同店も加盟する仙台蒲鉾協同組合では、少年サッカー大会「SASAKAMA CUP」を開催するなど、スポーツ振興・地域貢献にも積極的に力を入れている。
J2で優勝した2009年のシーズン途中からスポンサーをさせていただくことになりました。仙台の商工会議所青年部で、ベガルタ仙台の方を含め一緒に活動していくなかで、仲良くなったのがきっかけだったでしょうか。いきなりユニフォーム、は確かに珍しいですかね。でも我々としては地域のために貢献したいという思いで、市民から愛されているベガルタ仙台を応援するというのは意味がありましたから、社内でもすんなりと決まったんですよ。
ホームゲームでキッチンカーを出して、名物のひょうたん揚げを販売しました。あとは「ベガかま」といって牛タン入りのスタジアム限定かまぼこを、平瀬智行選手(サッカー元日本代表、現ベガルタ仙台強化部)と開発したこともあります。J1に昇格したときは、湘南ベルマーレのスポンサーである小田原のかまぼこ屋さんとコラボして、“板かま”と“笹かま”のかまぼこマッチをやったりしましたね。
それこそ平瀬選手とは、2011年の震災の年ですね。岩沼市の避難所に行って、キッチンカーでかまぼこを揚げて配ったり、そんなこともさせていただきました。被災直後はかなり大変な状況でしたので、温かい出来立てのものを食べていただいて、喜んでいただいたというのは、提供した我々としても大変うれしかったですね。
ベガッ太くんとは、阿部蒲鉾店だけではなくて、商店街のイベントなどにも来ていただいたり、いろんな繋がりがあってお世話になっていたので、ぜひ誕生日プレゼントを贈りたいなと思いました。ちょうど生産部のほうで、「こういうのを作れますよ」とアイディアがあったので、ベガッ太くんの似顔絵入りかまぼこを毎年作っています。
毎年一緒だと面白くないので、何かを加えたり、メッセージを変えたりしていますね。ベガッ太くんはホヤ好きなので、ホヤを描いたり、実際にホヤの身をかまぼこに混ぜたりしています。ファンやサポーターのみなさんからは「今年のかわいいね」とコメントをいただいていますね。今後も続けていきたいと思っています。
ベガルタ仙台レディース(現マイナビ仙台レディース)は、当初はプロ契約ではなかったので、働きながらサッカー選手を両立されていました。採用について打診があり、ぜひ協力できればということで雇用させていただきました。最初は本社勤務で事務作業やひょうたん揚げを揚げたり、店頭に立ってもらっていましたよ。2年目からは練習時間が長くなったので、工場勤務に異動し、見学の対応などを担当していました。練習場と工場は、車で5分ほどの距離でとても近かったんです。
県内のいろんな企業でそれぞれ選手が働かれていましたが、弊社は一人ですね。今も現役で活躍されているゴールキーパーの齊藤 彩佳さんです。コツコツと真面目に、おとなしいタイプで、でも試合になるとゴールキーパーだから全然雰囲気が違って、「あれ?」ってすごくギャップがありましたよ(笑) 今はプロ契約になりましたからね。でも卒業してからもお店に買い物に来てくれますし、試合を見に行ったり、交流は続いていますね。
そうですね。かまぼこはタンパク質が豊富で、筋肉の疲労を早く回復させる効果があって、練習終わってすぐに食べるととてもよいと言われているんです。そういう体作りにも役立ってほしいなという思いで、協力させていただいています。アカデミーに通う小学生や中学生の若い世代にも、補食として毎週提供させていただいています。
仙台蒲鉾協同組合が一緒になって、8歳以下の少年サッカー大会を共同開催しています。親御さん含め400~500名が集まります。大会には管理栄養士の方に来ていただいて、運動の後にどういう食事をしたらよいのか、その中のひとつとしてかまぼこの栄養の話などもしていただいています。ほかにも毎年8月に行われる「ベガルタカップ」という少年サッカー大会でも、出場チームのみなさんにかまぼこを提供させていただいています。
個人的には笹かまの中でも「吟撰笹(ぎんせんささ)」が好きですね。今年の品評会では最高位の農林水産大臣賞をいただきました。原料もより上級の魚を使っていて、昔ながらの食感で、魚の風味もしっかり感じられておすすめです。阿部蒲鉾店の商品は調味料など余計なものは極力使わず、シンプルに魚の素材の良さを出すようにしています。食感にもこだわりがあって、12mmくらいの厚さが一番いいと言われていますが、それを踏まえて設計していますね。
元々の社風といいますか、それこそ「笹かまぼこ」を命名した創業者も、商標を取って自分たちだけで独占するということはせず、戦後に開発した自動焼き機も公開したり、地域や業界の発展のため、という考えが代々ありました。そういう社風もあって、今でも独り勝ちすればいいではなくて、全体を盛り上げたいという思いでやっていますね。
昔作った「ベガかま」もそうですが、また何かコラボ商品を作れたら面白いなと思いますし、健康面で業界全体としてもフィッシュプロテインをPRしているので、そういう意味では、かまぼことスポーツを連動させて何かいろいろできたらいいなと思います。
30周年ということで大きな節目ですので、やはり、本当に、J1に復帰していただきたいですね。それがサポーターの想いでもあり、地元の人の想いでもあるので、ぜひ残り試合、全部勝つくらいの勢いで頑張ってほしいです。それでまた地域が盛り上がると嬉しいですね。
株式会社阿部蒲鉾店
創業:1935年
所在地:宮城県仙台市青葉区中央2-3-18
本店営業時間:10時~18時30分
https://www.abekama.co.jp/